医療崩壊の定義と理解のポイント

医療崩壊は医療システムの崩壊を意味するもので、医師や病床の数に対して患者が急激に増えることで発生します。
ひと度崩壊すると立て直すのは難しく、立て直すにしてもその間に診療が追いつかなくなったり、治療の極端な質の低下が起こります。


 

医療崩壊とは

平時なら救えるはずの命も、医師も病床も足りていない状況では、患者に優先度をつけて治療を行うことになります。
治療ができる状況はまだ良いですが、崩壊が進むと治療どころか診察すら断念することもあります。

医療関係者はただ死にゆく患者を見届けることになるので、自責の念に駆られたりPTSDの発症に繋がります。
知識や技術と経験はあるのに、患者が多過ぎて手が回らず、救えない命が手のひらからこぼれ落ちる結果に至るわけです。

その無念や無力さは計り知れませんし、医療崩壊はまさに有事といっても過言ではなく、誰もが不幸になってしまう事態です。
一般的に、複数の重症患者が同時に発生するケースは限定的で、緊急を要する事態も頻繁には起こらないものです。

しかし医師不足や医療サービスの縮小下では、自然災害などでこのような崩壊に至ることはあり得ます。
日本では医師数の抑制や医療費の抑制などで、医師不足が発生したことから、医学部の増員や女性の待遇改善などで対応しています。

 

海外に医師が流出しているケースも・・・

他国でも似たような状況は発生しているので、必ずしも日本国内だけの問題ではないといえるでしょう。
日本だと珍しいですが、海外ではより良い待遇を求めて、海外に医師が流出しているケースもあります。

どれだけ備えていても、想定以上の事態が発生すると避けられないのが医療崩壊です。
例えば、感染性のウイルスなどの病気は、広範囲に爆発的な影響をもたらし、同時多発的に患者を増やすのでリスクが高いです。

感染力が弱ければ問題になりませんが、感染力が強い上に症状が悪化しやすい病気だと大変です。
更に、感染しても症状が現れない人が紛れていたり、短時間で急激に症状が進行する人もいるとなると余計に厄介です。
どの医療機関の設備でも対応できて、治療法が確立されていれば心配無用ですが、ウイルスが未知のものだとしたら話は違ってきます。

 

検査数を意図的に絞ることもできるが・・・

敵が目に見えないので対処が難しく、検査は結果が出るまでにタイムラグがあって、患者が増えると対応しきれなくなります。
検査数を意図的に絞ることもできますが、実態の把握が遠のいてしまうので一長一短、あるいは諸刃の剣です。
時間稼ぎにはなりますし、ウイルスの発生や拡大初期なら使える手段ですが、目に見えない状況下で拡大が進行したり、爆発的に患者が増える恐れがあります。

世界的に猛威をふるっている新型コロナウイルスは、イタリアで実際に医療崩壊を招きました。
日に日に医療現場が悪い方向に進み、医療の質低下や診療が受けられない患者が増加したことで、日本にも衝撃が伝わっています。

イタリアだけでも死者数は2万人を超え、1日に500人以上が亡くなる日も発生しているほどです。
感染者や検査待ちの人を含めれば、その数は文字通り桁違いですから、医療現場は地獄そのものです。
医師の数が10倍で、病床にも余裕があれば事態は違っていたでしょうが、現実には限られたリソースで対応する他ないのが実情です。

 

医師にもリスクがある

しかも厄介なのは医師にもリスクがあることで、マスク不足などで医療関係者の間で感染が拡大するとなれば、更なる地獄が待ち受けています。
一方ではアメリカでも爆発的な感染が起こり、医療崩壊のリスクが高まっている状況です。

ニューヨークだけでも死者は平時の2倍と、驚くような数字が発表され注目を集めます。
この2倍という数字は、感染症の新型コロナウイルスに限定しないもので、感染した患者の増加とその余波を受けた人を含みます。

つまり、感染症による患者の増加は、間接的に死者の増加を招くことを示唆しています。
そこに軽症、もしくは無症状の人が検査を求めて押し寄せれば、医療崩壊は目前に迫るでしょう。
感染症が崩壊のリスクとなり得るケースの場合は、人の外出や移動を制限するのが、リスクを回避する最善手になります。

勿論、人の活動は完全にコントロールできないので、外出を0にすることは不可能です。
それでも新たな感染者を減らすことができれば、医療のリソースは重症患者に回せます。

 

まとめ

外出や移動の制限を行う上で懸念材料になるのは、危機感の薄い人が活発に活動することです。
流石に交通や輸送を止めてしまうと、経済活動が停滞してしまうので、その匙加減が難しいところです。
経済的に余裕のある国なら、国民全員に当面の生活費を給付して、家にいてもらう指示が出せます。

ただ、何時収束するか見通しのつかない問題の場合だと、何度も繰り返し使える手ではなくなります。
予算には限りがありますし、人は長期的に外出できない状況を好まないので、成功させるには1回だけのチャンスと考えて速やかに実施することが必要でしょう。

感染症以外だと、人から人にうつる心配はないので、同時多発的な患者の増加が起こるのは稀です。
今回のように過去最大級ともいえる感染症は、正解がない中で各国が手探りの対応を行い、それぞれに異なる結果が現れています。
 

最終更新日 2025年5月24日 by nakojp